ら》い今のゼラチン乾板ではおそらく不成効であったであろうが、タンニン、蛋白、塩化コロジオンを使う古い方法が丁度適当であったのである。また重クローム酸ゼラチン法を用いて著しい結果を得た。そうして透明な棒の生ずる光波位相の反転に気付いた。この考えは後に発展して階段格子(〔e'chelon grating〕)となったのである。
 その後アメリカでローランド、マイケルソン、アンダーソン等によって優秀な金属製格子が作られ、またソープ、ウォーレス(Thorpe & Wallace)のセルロイド鋳型《いがた》などが出来て、レーリーの転写は実用にはならなくなった。しかしレーリーの貢献はこの研究から導かれた分光器の分解能に関する理論的研究であった。今から見れば誰でも気の付きそうなこの問題に当時まだ誰も気が付いていなかったのである。レーリーは五年かかってこの研究を完成し、格子のみならず、プリズムの場合をも補足した。これらの結果を纏めて Phil. Mag. に出したとき "I wonder how it will strike others. To me it now seems too obvious."
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