中の種々の領域に種々の科学者を配当する事ができるであろう。
 ヘルムホルツや、ケルヴィンやレイノルズのごときはLSKいずれも多分に併有していたものの例である。現存の学者ではジェー・ジェー・タムソンがこのタイプの人であろう。ファラデーや現代のラザフォードやウードのごときはLK軸の面に近く位している。ボルツマン、プランク、ボーア、アインシュタイン、ハイゼンベルク、ディラックらはLS面に近い各点に相当する。ただ L = 0 すなわちSKの面内に座する著名の大家を物色する事が困難である。あるいはレーリー卿のごときは少なくもこの座標軸面に近い大家であったかもしれない。
 ゾンマーフェルトやその他の数理物理学者はS軸の上近くに座するものであり、純実験、純測定の大家らはK軸に羅列《られつ》される。これらは科学の成果に仕上げをかける人々である。そうして科学上のピュリタニズムから見て最も尊敬すべき種類の学者である。
 しかるにL軸の真上に座する人はもはや科学者ではない。彼らは詩人である。最善の場合において形而上学者《けいじじょうがくしゃ》であるが最悪の場合には妄想者《もうそうしゃ》であり狂者であるかもし
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