現象についてもやはり種々の可能な原因を列挙している。その中に雷雨の生因と、雲および風の渦動《かどう》との関係が予想されているのがおもしろい。また雷鳴の音響の生因について種々の考えがあげてあるが、この問題については現在でもまだ種々の異説があるくらいである。この方面の研究に没頭せる気象学者にとっては、この一節は尽きざる示唆の泉を与えるであろう。
また風が速度のために熱するということも考えられている。圧縮によって熱の種子が絞り出されるという言葉もおもしろい。これらはガス体の熱力学の一部の予言とも見られる。
雷電の熱効果、器械的効果を述べる中に、酒壺《さかつぼ》に落雷すると酒は蒸発してしまって壺は無事だというような例があげてある。これなどは普通の気象学書には見えないことであるが、事実はどうだか私にはわからない。
雷電の火の種子が一部は太陽から借りられたものであるとの考えも正鵠《せいこく》を得ていると言われうる。
電火の驚くべき器械的効果は、きわめて微細なる粒子が物質間の空隙《くうげき》を大なる速度で突進するによるとの考えは、近年のドルセーの電撃の仮説に似ている。またここのルクレチウスの
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