マルコポロから
寺田寅彦

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)以来の馴染《なじみ》ではあった

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)多分|鰐《わに》の事

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)しきたり[#「しきたり」に傍点]だと答えた。
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 マルコポロの名は二十年前に中学校の歴史で教わって以来の馴染《なじみ》ではあったが、その名高い「紀行」を自分で読んだのはつい近頃の事である。読んでみるとやはり面白い。尤《もっと》も書いてある記事のあまり当てにならないという証拠は自分の狭い知識の範囲内からでも容易に列挙されるくらいであるが、事実という事は別問題として、単に昔の人の頭に描かれた観念として見るだけでも色々の意味で面白い事が沢山にある。
 始めのうちはただ読みっ放しにしていたが、あまり面白いから途中からは時々手帳へ覚え書きに書き止めておいた。その備忘録の中から少しばかりの閑談の種を拾い出してここに紹介してみようと思う。以下に挙げてある頁数は、エヴェリーマンス・ライブラリーの中のこの書物の頁数である。

         
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