マーカス・ショーとレビュー式教育
寺田寅彦
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)鋪道《ほどう》を埋めて
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)一人|宛《あて》平均三十秒
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地から1字上げ](昭和九年六月『中央公論』)
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アメリカのレビュー団マーカス・ショーが日本劇場で開演して満都の人気を収集しているようであった。日曜日の開演時刻にこの劇場の前を通って見ると大変な人の群が場前の鋪道《ほどう》を埋めて車道まではみ出している。これだけの人数が一人一人これから切符を買って這入《はい》るのでは、全部が入場するまでに一体どのくらい時間が掛かるかちょっと見当がつかない。人ごとながら気になった。
後に待っている人のことなどはまるで考えないで、自分さえ切符を買ってしまえばそれでいいという紳士淑女達のことであるから、切符売子と色々押し問答をした上に、必ず大きな札《さつ》を出しておつりを勘定させる、その上に押し合いへし合いお互いに運動を妨害するから、どうしても一人|宛《あて》平均三十秒はかかる
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