く、かなり一様の点数を得ていたが、ただ習字だけはどうしても下手であった。これがため習字を課せられているうちは、平均点数の上から成績のほうへも影響したが、上級に進んで、習字を省かれるとともに、成績も確かによくなった。そのほか別にきらいのものもなかった代わり、また格別得手というものもなかったが、その中で地理だけは中学時代から、特別に興味を持っていた。それで、なるべくこれをどこまでも研究してみようという考えを起こさぬでもなかったが、ある都合上高等学校では工科にはいり、三年の時改めて物理に転じ、もって今日に至ったのである。
記憶に便ぜんがため、自分は学校にいるうち抜き書きということをよくやった。抜き書きというのは、言うまでもなく教科書中の主要の点を抜き書きして、教科書の欄外などへそのまま書き抜いておくのである。同じ教科書の中でも、動物、植物、鉱物、地理、歴史、化学のごとき、主として暗記すべきものは、こうしたほうが得なように思う。ちょっと例をあげてみると、教師からある種の質問を受けた時、悉皆《しっかい》頭脳《あたま》に記憶してある事がらでも、どうもその質問に応じて、容易に返答ができぬ場合がある
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