がまたよほど妙なものであった。額がおでこでいったいに押しひしいだように短い顔であった。そして不相応に大きく突っ立った耳がこの顔にいっそう特異な表情を与えているのであった。どうしたのか無気味に大きくふくれた腹の両側にわれわれの小指ぐらいなあと足がつっかい棒のように突っ張っていた。なんとなしにすすきの穂で造ったみみずくを思い出させるのであった。
三毛は明らかな驚きと疑いと不安をあらわしてこの新参の仲間を凝視していた。ちび[#「ちび」に傍点]猫は三毛を自分の親とでも思いちがえたものか、なつかしそうにちょこちょこ近寄って行って、小さな片方の前足をあげて三毛にさわろうとする。三毛は毒虫にでもさわられたかのように、驚いて尻込《しりご》みする。それを追いすがって行ってはまた片足を上げる。この様子があまりに滑稽《こっけい》なので皆の笑いこけるのにつり込まれて自分も近ごろになく腹の中から笑ってしまった。
すこし慣れて来ると三毛のほうが攻勢をとって襲撃を始めた。いきなり飛びついて首を羽がいじめにして頭でも足でもかみつきあと足で引っかくのである。ほんとうに鷹《たか》と小すずめとのような争いであった。ちび
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