らであろう。一人の哲学者が一言二言いったというだけで人間全体が別種の存在に変わって人間界の方則があべこべになるということは想像ができない。
 ついでながら、揺れる電車やバスの中で立っているときの心得は、ひざの関節も足首の関節も柔らかく自由にして、そうして心もちかかとを浮かせて足の裏の前半に体重をもたせるという姿勢をとるのだそうである。大地震の時に倒れないように歩くのも同じ要領だということである。これも言わば足の場合における「手首の問題」とでも言われるであろうか。
[#地から3字上げ](昭和七年三月、中央公論)



底本:「寺田寅彦随筆集 第三巻」小宮豊隆編、岩波文庫、岩波書店
   1948(昭和23)年5月15日第1刷発行
   1963(昭和38)年4月16日第20刷改版発行
   1997(平成9)年9月5日第64刷発行
入力:(株)モモ
校正:かとうかおり
2003年6月25日作成
青空文庫作成ファイル:
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