歩に対する種々なる要求と性の道徳的観念を調和せしめ、性の全王国に神聖の気を充溢させ以て再び崇拝の対象とせしめなければならない。これは恋愛が単に新しき存在を創造するからと云ふのではない。偉《おおい》なる愛によつて創造せらるるこの存在物は時代より時代を追ふて幾多の精神を拡大するであらう。而して情熱を放散する力ある感情を賦与せられたる豊富なる人類が漸次に創造せらるるであらう。恋愛は唯に人類が社会の新しき一員を得るの衝動となる許《ばか》りではない、それは人類が更らに密接なる関係を結び、子孫がその両親から大なる恋愛の力を遺伝する程度に従つて次第に高めらるる衝動となるのである。全ての人間関係によつてこの力は人類全体の上に反応するであらう。如何となれば人生に於ける万事は一つとして性愛と関係のないものはないからである。かくして生を否定する宗教にあつて性愛は最大の敵であり、生を肯定する宗教にあつては神聖なる衝動である。それは進化の階梯を進むるのみならず、尚ほ且つそれを確立せしむるものである。
性愛は芸術、文学、法律、労働、宗教等と最も親密なる関係に立つてゐるものである。そうして性の撰択にその理想を与へ
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