も現状態に適応されることが出来る。かくして低級なる人々は高級の人々によつて教育せらるるであらう。
 一般社会に於ても又個人の場合に於ても、全ての新しき形式を通じて充分なる力の発揮を試み、豊富なる変化を与へ、同時に完全なる結合を呼び起す企ては常に進化の過程に一歩を進める事を意味するのである。若しも社会にして全ての子供を同様に保護し個人をして彼等の恋愛を保護することを許したなら現在二つの異なれる方向に放射しつつある精神的生活の勢力は更らに焦点に集められるであらう。子供の根本的生活に対する責任の感情は正出といふ俗論に依て弱められ、子供の養育に対する責任の感情は私生といふ俗見に依て又弱められる。
 恋愛を更らに向上せしむるの努力は即《や》がて恋愛が生命を得、幸福を与ふる衝動となるのである。この衝動の停止は直ちに恋愛の死となるのである――離婚の自由によつて現在の結婚制度が終りを告ぐると同時にこの努力は無限の力をもつて猛進するであらう。
 屡々駁論に於て例証せらるる如く自由結婚に於ても恋愛の死するといふ事は事実である。然しこれは自由離婚によつて実現せらるる美はしき恋愛の可能を否定する何物をも証拠立
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