達の家へも足りない金の算段をするつもりで訪ねた。しかしとうとういい出し得ずに止めてしまった。金が出来ないといって夜になって再び家へフラリと帰りたくはない。帰って帰れないことはないが、もう一度出たものを帰る気はどうしてもない。仕方なしに三池の叔母の家まで行った。そこでもついに話し得ずに、そして家出したことが知れそうになって思案にあまってこの友達の家まで来た。手紙を出して頼んだら応じてくれる当てのある人が二三人はある。その人に相談する間も、見つけ出されて連れかえられそうな所はいやだと思って志保子をたよった。しかし一週間になるけれどもどこからも返事は来ない。たのんだ金が出来ないとしてもそのままではいられない。どうしたらいいのだろう。そう考えてくると登志子はもう今日までただイライラして、もう、どうなってもいい、なるようにしかならないのだ、いっそ堕ちられるだけどん底まで堕ちていって、この目覚めかかった自我を激しい眩惑になげ込んで生きられるだけ烈しい強い、悲痛な生き方をしてみたい。あの生命がけでその日その日を生きていく炭坑の坑夫のようなつきつめた、あの痛烈な、むき出しな、あんな生き方が自分にもでき
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