が憎らしくなった。
「どうしてあんなですかねえ、ああわがままがはげしくては、とても家なんかもてるもんじゃありませんよ、一緒にいるようになったらどしどししかりつけてやらなければいけませんよ、本当に」
 登志子は床をとってもらうといきなり横になってすっぽりと蒲団を被った。もうひとりだと思うと、涙が溢れるように流れた、何の感情もない、ただ涙が出る、虚心でいて涙が出る、――ゆるんだ疲れ切った空虚な心は、いつか自から流す涙を見つめながら深い眠りに落ちていった。[#地付き]――一九一三・一一――



底本:「伊藤野枝全集 上」學藝書林
   1970(昭和45)年3月31日第1刷発行
   1986(昭和61)年11月25日第4刷発行
入力:林 幸雄
校正:UMEKI Yoshimi
2002年11月9日作成
青空文庫作成ファイル:
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