が脱字、366−12]を見上げながら訊ねました。
「ああ帰った。Yの奴、Mが帰ろうというと、『三月だというのに筍の顔なんか見て帰れるかい。俺あ御馳走になって帰るんだ』といっていたから、今日は君は招待された客じゃないのだ、御馳走することはできないから帰れって帰してやった。」
「困った人ね。」
私はただそういうよりほかはありませんでした。それと同時に、図々しいYに対しては、私は助かった、という気がしただけでしたけれども、Mさんには何となく済まない気がしました。
間もなく私共は一時雑誌を中止して鎌倉へ引越しました。その冬、第二次の「労働運動」を初める頃までに、二三度遊びに来ましたが、彼はもう何となく、私共に反感を持つと同時に煙たがっていました。そして帰りにはきっと乏しいOの財布をはたかせたり、最後にはその上に着物までも質草に持っていくような真似をしました。
その後、彼はもう猛烈にOの悪口を云っていることを私共は知っていました。彼は同志をとおしては、雑誌をはじめるということを口実に金を要求してきました。が、Oは他人を通じてのその無心にはいっさい耳を傾けませんでした。
Oが第二次の「労
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