る。』と云つたゴルドマンの言葉を今更繰返して考へなければならない。自分達(Tと私)は日常生活のモトウとして『出来るだけ自己に忠実に』と云ふことを心懸け、そしてその為めに努力してゐる。自分達は自分達の生活中からあらゆる虚偽を追ひ出し、自由にして自然な生き/\した生活を営まふと努めてゐる。自分達は今なるべく社会との交渉をさけてゐる。自分達は時々心弱くなつて無人島の生活を夢想する。自分達のやうにわがまゝでぢきムキになつて腹を立てたり、癪に障《さわ》つたり苦しがつたり、落胆したり、するものにはとても今の社会に妥協してあきらめて easy−going な太平楽を云つて生きてはゆけない。全然没交渉な生活をするか、進んで血を流すまで戦つて行くかどつちかだ。然し自分達は軽はづみに飛び出して犬死はしたくない。で、イヤ/\ながら我慢して先《ま》づ今の処なるべく没交渉の方に近い生き方をしてゐる。然し自分達は自分達のやうに考へてゐるものが勿論自分達ばかりでないと考へる時、そこに非常な希望と慰藉とが与へられる。日本に於ける最初の真実の革命の曙光がもはや遠からず地平の上に現はれると信じてゐる――否既に現はれてゐる
前へ
次へ
全9ページ中3ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
伊藤 野枝 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング