ただ私一人のわがまま勝手から、そのような無情な真似をすると思われるのは、私にとってはどう考えても残念でたまりませんでした。それで私は、たとえどうなろうとも、辻との別居を実行するには、どうしても大杉さんの私に持つ愛も拒み、私が大杉さんに対して持つ愛をも捨てなければなりませんでした。これは、私にとって非常につらい事でした。けれども私は、ひとりになって長い間私の望んでいた知的欲求の満足にすがれば、きっと私はまた自分だけの道をひらき得ると思いました。そうしてそれが最も私の歩くに自然な道だと思いました。私は種々な方面からその自分の決心に念を押して後、いよいよそうすることに決めました。そうして私は、その私の決心を話すつもりで大杉さんに会いました。
第一に会いましたときには、私はその決心はどうしても通るものとして、通さねばならぬものとして、それ以上の用意をせずに行きました。しかし前にも申しましたように、この、私の大杉さんに対する態度は私の本来のものでない、非常に種々なものによって、いじめられて出来た態度でしたので、大杉さんに会うと同時にその決心はすっかりくずれてしまいました。それでも、私のまだいろ
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