、思ったのである。
 もっとも、その男が地下鉄の中で掏ったところを目撃したわけではない。が、何となく態度や表情がおかしいと、ピンと来たのだ。いわゆる挙動不審というやつである。
 しかし、つけて行きながら、本当に掏ったのだ――という自信はなかった。いわば無責任な尾行であった。いや、もしかしたら、無気味な尾行かも知れない。
 ところが、男はちらと振りむいた。
 視線がばったり合った。
 途端に、男はぎょっとしたようだった。そしてぱっと駈け出した。
「あ、やっぱし……」
 おれの直感があたった――と咄嗟に呟きながら、小沢はあわててそのあとを追うて駈け出した。
 だんだん距離がつまって来た。
「おい、待て!」
 はじめて小沢は声を掛けた途端、
「ちょっと待っとくなはれ。ちょっと……」
 と、うしろから声を掛けられた。
 思わず振り向いた。
 その拍子に、小沢は手を掴まれた。
 亀吉だった。――が、小沢には見覚えがない。
「誰だ……?」
「…………」
 亀吉はひょいと黒い首をひっこめて、もじもじしていたが、やがて思い切って、
「――わてだっか。わては……掏摸だんネ」
「えっ……?」
 と、小沢は
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