のだ。
 照れくさいのである。それに、一人でやるところに、豹吉はいかにも豹吉らしいやり甲斐を感じていた。
 もっとも、豹吉は向うみずではあったが、莫迦ではなかった。
 だからS署の前まで来た時、さすがにいきなり飛び込んで行くような、滅茶苦茶な真似はしなかった。
「どうしたら、最も効果的に救い出せるだろうか」
 と、立ち停って考えてみるだけの、思慮分別は持っていた。
 S署の玄関は、警官が出たりはいったりしていた。
 制服ではないが、玄関の石段を登って行く歩き方で、
「私服だな」
 と、すぐ判るものもいた。
 真青な顔で、泡を食いながら、ソワソワと石段を登って行くのは、掏摸にやられて届けるのか、それとも駅で置引に荷物を盗まれたのだろうか。
 シャツをズタズタにして、顔中血まみれの男が二人、昂奮しながら、警官に連れられてはいって行くのは、いわずと知れた喧嘩だ。
「なるほど、喧嘩というやつは見苦しいわい」
 と、豹吉は呟いた。
 棍棒を持った若い警官が五、六人、あわただしく出て来て、駅の方へかけ出して行った。
 どんな事件だろう。
 若い女が泣きながら石段を駈け登って行く。
 何を訴えに行く
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