………」
「年貢の収め時――という古くさい言葉があるが、君もそこへ気がついたのは莫迦でなかったよ。ガマン(刺青)の針助はとっくにつかまったんだから」
と、小沢は普通の調子で言った。
読者はもう想像がついたであろう。小沢が何のためにS署へ来ていたかということを。
察しのつく通り、小沢は細工谷の針助の家で針助を縛りあげるとその足で、S署へ送ってきたのだった。
わざわざS署をえらんで送って来たのは、雪子の行方を空しく探し廻っているうちに十時が来て中之島公園へ駈けつけようとしてS署の前を通り掛った時、警官に連れられてS署の玄関へはいって行く雪子の姿を見たからであった。
小沢は針助を送って行くと、針助の家にあった雪子の著物を署員に見せて、
「この著物がないため、あの娘はふと魔がさして宿屋の著物を盗んだのです」
と、雪子のために弁明し、釈放をもとめたが、生憎雪子の係の刑事は、当直ではなかったので、雪子を留置するとそのまま自宅へ帰ってしまっていた。
小沢はその刑事が翌朝出署してから、改めて交渉しようと、ひとまずS署を辞すことにして、玄関を出ようとした途端、豹吉に出会ったのである。……
「えっ、針助が……?」
つかまったのかと、豹吉はもう少しで、掟を破って、驚くところだった。
「そうだ。針助は何もかも白状したよ。君たち青蛇団はみんな、針助の針にひっ掛って、背中に蛇の刺青をしているそうだね」
「…………」
豹吉は唸っていた。
「いずれ一斉検挙になるだろう。今のうちに自首したらどうだ。いや、自首するつもりで来たんだろう」
「大きなお世話だ」
「いや、世話を焼きたいよ。君たちのように若い青年が、刺青をしたまま、一生悪事を働いて暮すのかと、思うと黙って放って置けない」
「ふーん。黙って放って置けんからそれで密告したんやな。ご立派だよ」
豹吉はきっと小沢を睨みつけた。
「密告……? まさか。密告するくらいなら誰も一人で中之島へ行きやしない。あの時、警察のトラックに乗って行けばよかったんだ。しかし、そんなことしたくないからわざわざ一人で行って、今もこうして自首をすすめているのじゃないか」
「ほな、どうしても自首せエいうのやな」
豹吉の声は急に力が抜けていた。
「そうだ、どうあっても自首しろと言いたいのだ」
小沢の声は、豹吉の何か弱まった声と反対に、急に決然とした調子を帯
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