か、むつかしい問題だ。

 これからの文学は、五十代、四十代、三十代、二十代……とはっきりわけられる特徴をそれぞれ持つようになるだろう。目下のところ五十代はかわらず、四十代は迷い、三十代は無気力、二十代はブランク。四十代はやがて迷いの中から決然として来るだろうし、二十代はブランクの中から逞しい虚無よりの創造をやるだろうか、三十代はどうであろうか。三十代(僕もそうだが)は自分の胸に窓をあける必要がある。窓の中はガラン洞であってもいい。そのガラン洞を書けばいい。三十代は今まで自分に窓をあけるのを、警戒しすぎていた。これは三十代の狡さだ。尻尾を見せることを、おそれてはならない。

 新人が登場した時は、万人は直ちに彼を酷評してはならない。むしろ多少の欠点(旧人から見れば新人はみな欠点を持っている)には眼をつむって、大いにほめてやることが、彼を自信づけ、彼が永年胸にためていたものを、遠慮なく吐き出させることになるのだ。起ち上りぎわに、つづけざまに打たれて、そのまま自信を喪失した新人も多い。新人を攻撃しつづけると、彼は自己の特徴である個性的表現を薄めようとする。だから、まず彼をほめ、おだてて、思
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