あるもっともらしい男の前では感ずる羞恥心を京吉のような男の前では、奔放に捨ててしまうことが出来るのだった。眩しいほどの美貌だが、同時に暗闇のような男であった。
だから陽子も寝巻に細帯というはしたない姿を、京吉の眼にさらしておれたのだが、急にこの暗闇からピカリと光る二つの眼がじろっと陽子の体を見た。
「何見てるの……?」
「陽子、今夜十番館へ行った……?」
「休んだの。あたしもうホールをよそうかと考えてるの」
「へえーン」
「このアパートも越そうと思うの。京ちゃんどこかアパート空いたら教えてよ」
「へえーン。越すの……? そうだろうね」
昨夜首ったけ侯爵の春隆とてっきりだった――それが陽子の心境を変えてしまったのだと、京吉の眼は言葉のように針を含んでいた。
「何よ、そんな眼をして……」
「…………」
「京ちゃん、そんな眼をするんだったら、帰ってよ」
陽子はふと気味悪くなった。ジリジリ迫る男の眼を感じたのだ。
十
この唇……この耳……この首筋……この肩……この手……この胴……この腰……この足……をあの首ったけ侯爵が髭の剃り跡のような青い触感と蛇の動きにも似たリズムで
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