っている。しかし、それでは坂野にも銀ちゃんにも合わす顔はないし、よしんばそんなあやまちがないとしても、二人で宿屋へ泊ったとすれば、いいわけの仕様はあるまい。
 といって、芳子を宿屋へ送って、自分ひとり雨の中を、田村へ帰って行くというのも、気の遠くなるような寂しさだった。
 だから、陽子のアパートへ二人で泊めて貰うというだしぬけに泛んだこの思いつきは、京吉の心に灯をともしたようなものだった。そして、この思いつきは、やはり二十三歳の孤独な青年の、空ッぽの頭の触感が探り当てたものだった。陽子の所だったら、芳子とのあやまちも起らず、坂野や銀ちゃんに知れてもいいわけは成り立つし、それに陽子の所で一夜を過すというのは、何か自虐的な快感だった。
 陽子は昨夜誘惑されたのだ――と、京吉は信じ込んでいた。その陽子の所へ、女を連れて泊りに行く――これは陽子へ投げつける京吉の一種の軽蔑であり、悔恨のようなものだ。
「どんな顔をするか、おれ見てやりたいや」
 と、京吉はふと眉をひそめて呟きながら、女と二人で行けば陽子も泊めてくれるだろうし、おれも正々堂々と泊まれると、もう芳子をだしにする考えが、足を速めた。

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