芳子を、拝むように停めたのは、祇園荘には芳子の亭主の坂野がおり、芳子がそんなところへはいって行けば、どんな結果になるかも知れない――という京吉の二十三という歳に似合わぬ老婆心からだったが、やっと芳子を説得してみると、もう芳子は、
「あたし、じゃ、どうすればいいの……?」
と、駄々をこねたように、動かない。動かないだけならいいが、道の真中で、
「――いいわ。あたし泣いてやるから……」
と、本当に泣いてやるからと本当に泣き出してしまいそうだった。
「女というものは、どだい男を困らせるように出来てやがらア。だから、おれきらいだよ」
京吉はスリのあとをつけて行ったカラ子のことも気になっていたし、芳子など放って置いて、逃げ出したかったが、もともと京吉は自分の女以外には優しく、お人善しで、それがまた京吉の孤独なあわれさであった。
「芳ッちゃん、そんなに言うなよ。芳ッちゃん泣くと、おれ困るよ」
「じゃ、どうすればいいの……?」
「おれ知るもンか」
坂野のアパートへ帰れとも言えなかったし、といって、グッドモーニングの銀ちゃんの所へ行けとも言えなかった。しかし芳子は、おれ知るもんかという京吉の言
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