彼女の褐色を帯びたうるんだような瞳が、妖しく笑った。そして、
「あたしに会いたければ、銀座のアルセーヌにいらっしゃい」
という言葉を残すと、三等室の中へすらりと伸びた姿を消してしまった。
章三は洗面所の中へはいると、鏡に顔を写した。青ざめた顔にふっと微笑がうかんだ。
走馬燈
一
四条通りの夜更けの底を雨が敲いていた。
米原の駅の近く、汽車のデッキから突き落されて、ひと知れず死んで行った名も知れぬ男の、土人形のように固くなった屍の上に降り注ぐ同じ雨が、夜更けの京都の町をさまよう哀れな人々の、孤独に濡れた心にも降り注いでいるのだ。
つい四五日前までは夏のようであったが、町中のお寺の前の暗がりにふと金木犀のにおいを光らせて降る雨は、はや一雨一雨冬に近づく秋の冷雨だった。
ぶるッと体をふるわせて、カラ子は四条通りの交叉点を河原町通りへ折れて行った。
背中のくぼみや腋の下まで、びっしょりと雨に濡れながら、なおさまよっているのは、京吉を探したい一心からであった。
今日の夕方、京吉の財布を掏った北山を大阪の中之島公園までつけて行って、首をしめられそうになっ
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