が現れたのを機会に、作者自身をも登場させて、ここで二、三註釈をはさむことにしたい。
この物語の主人公は、ダンサー陽子であろうか、カメラマンの木崎であろうか、それとも田村のマダム貴子であろうか、そのパトロンの章三であろうか、またはかつてのパトロンの銀造であろうか、その娘チマ子であろうか、田村の居候の京吉が主人公だともいえるし、京吉を兄ちゃんと呼んでいるカラ子も主人公の資格がないとは言い切れない。乗竹春隆もむろんそうだ。
そう言えば、アコーディオン弾きの坂野も、その細君の芳子も、その情夫のグッドモーニングの銀ちゃんもセントルイスのマダムの夏子も、貴子の友達の露子も、素人スリの北山も、清閑荘の女中のおシンも、上海帰りのルミ[#「ルミ」は底本では「ルリ」]も、芸者の千代若も、仏壇お春も、何じ世相がうんだ風変りな人物である以上、主人公たり得ることを要求する権利を持っているのだ。
この物語もはや八十五回に及んだが、しかし、時間的には一昼夜の出来事をしか語っていず、げんに新しい事件と新しい登場人物を載せた汽車が東京へ向って進行している間に、京都でもいかなる事件がいかなる人物によって進行させられ
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