趣味じゃないの」
と、皮肉りたいところだったが、じっと我慢して、
「――ちょっとハンサムね」
という言葉で、貴子の耳をくすぐったりした――それも商売人が資本主との会談に芸者を当てがうというあの心理からだったのだ。
しかし、貴子の何の情熱もなさそうな表情を見ていると、露子は、五十万円も出させるのは無理かなと失望気味でもあった。
しかし、失望していたのは、貴子の方だ。自分の若さを金に換算し、男というものをパトロンになる資格の有無で見るならわしが身にしみ込んでいる貴子にも、もし夢があるとすれば、貴族への憧れだった。どんなチャッカリした女にも、一つだけ抜けたところがある。貴子の場合は、貧しい家に生れて若くから体を濡らして来た生活の中でも捨てなかった「貴子」という自分の名前への、浅はかな誇りがそれだった。
「この人とは恋が出来そうだ」
そんな予感がふっと一筋の藁のように、頭に浮んだのだが、しかし、簡単に春隆から手を握られてみると、あっけなく夢はこわれ、もう貴子はリアリズムの女であった。米原を過ぎると、貴子は、
「ちょっとこっちを向いてごらん……?」
春隆の瞼を眼医者のようにくるりとむ
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