も風呂番でもいいから使ってくれと、かつては鉄成金だった五十男の男を下げて転がり込んでから、ちょうど四日目の土曜日の晩、銀造は貴子の所へ来ていた章三を見たのだった。ちらと一眼だけ、あとにも先にも一度だけ見た顔だったが、咄嗟の勘でその男が貴子の現在のパトロンであることが判り、その時以来、銀造にとっては生涯忘れられぬ顔となったのだ。というより、忘れたいくらいだった。どうせ貴子にパトロンがありそうなことは気づいてはいたが、顔を見れば、さすがに年甲斐もなくこの男かと嫉妬が起った――その証拠には、拘置所の夜明けにも、その男の顔が夢に現われたこともある。
 その顔が向い側のプラットホームから、汽車に乗ろうとしているのだ。銀造はどきんとして、苦痛に青ざめた顔をそむけた途端に、
「……十番線の列車は二十一時発東京行き急行であります……」
 という拡声機の声をきいた。銀造はプラットホームの電気時計を見上げた。
「二十時十分か。発車までにまだ五十分ある」
 銀造はそう呟いたが、肚の中はべつのことを考えていた。――あの男は東京へ行くのだな、すると今夜は京都へ行かないなと、そんなことを考えていたのだ。
 京都―
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