トルイスまで尾行して、電話で兄ちゃんを呼び出したのに、兄ちゃんはよその女の人にばっかし気を取られていたので、カラ子は結局機転を利かしてひとりで尾行して来たのだったが、さすがに嫉妬じみた気持に、カラ子は唇を噛んでいた。
 しかし、そのために京吉を恨もうという気もなかったのは、恋心の幼なさのゆえではない。ひとから優しくされることは、何となく諦めているこの少女の哀しいならわしだった。それゆえか、カラ子はひとから優しくされたいと願う前に、まず自分の方から献身して媚びて行こうとした。しぜん、ひとから頼まれごとをするのが好きだった。いや、頼まれぬことも進んでやりたがった。しかし、報酬はあてにせず、いわば孤児の感情のさびしさがさせる無償の献身であった。十二の小娘にしては、荷の重すぎるスリの尾行という仕事も、だからカラ子を、いそいそと弾ませていた。そして、それを立派にやりとげることが、京吉への恋心めいた気持の、せめてもの表現であった。
 電車が動き出した。カラ子はふと兄ちゃんとこのまま別れてしまって、もう二度と会えないのではないかという予感にさびしく揺れたが、眼はピカピカ光り、北山をにらんでいた。北山
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