はもう邪推のキンキンした声であった。
 その時、例のスリが急に立ち上って、勘定を払うと、セントルイスを出て行こうとした。
「兄ちゃん!」
 カラ子はじれったそうに、京吉の袖を引いた。

      四

 カラ子にうながされて、京吉はすぐそのスリのあとをつけて出ようと思ったが、しかし、坂野の細君の芳子の方へ、気は取られた。
 放って置けば、芳子は銀ちゃんに電話を掛けるだろう。しかし、銀ちゃんの傍には今坂野がいる筈だ。芳子から銀ちゃんへ電話が掛ったことを、もし坂野がその場で知ったら、どんな波瀾が起きるか知れたものではない。よしんば、坂野が気づかなくても、銀ちゃんは困るだろうし、だいいち、京吉の気持としても、昨日までの亭主と情夫がいる場所へ、女が電話を掛けるという光景を、だまって見ているにしのびなかった。何かいやアーな気持だ。
「だめッたらだめだ!」
 よせッと、京吉はいきなり、芳子の手から受話機をひったくって、ガシャンと切ってしまった。芳子は真青になった。
「気ちがいッ!」
「おれ気ちがいなら、おめえはキャッキャッだ!」
「…………」
 芳子は肩をふるわせて、京吉を睨みつけていた。半泣き
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