まうと、かえってますます美しく、はなやかになり、おまけに生き生きと若返った。古障子の破れ穴のように無気力だった京都は、新しく障子紙を貼り替えたのだ。かつての旦那だった大阪は、京都ではただで飛んでいる蛍をつかまえて、二匹五円で売っている。みじめというほかはない。
ところが、さすがに大阪だ。京都で一番賑かな四条通、河原町通の商店の資本は、敗戦後たいてい大阪商人から出ているという話である。
最近、四条河原町附近の土地を、五百万円の新円で買い取った大阪の商人がいるという。
焼けても、さすがに大阪だったのだ。――という眼でみれば、大阪の盛り場、闇市場を歩いている時と、京都のそれを歩いている時との感じの違いが、改めて判るのである。京都から大阪へ行く。闇市場を歩く。何か圧倒的に迫って来る逞しい迫力が感じられるのだ。ぐいぐい迫って来る。襲われているといった感じだ。焼けなかった幸福な京都にはない感じだ。既にして京都は再び大阪の妾になってしまったのかも知れない。
東京の闇市場は商人の掛声だけは威勢はいいが、点点とした大阪の闇市場のような迫力はない。
点点としているが、竹ごまのように、一たび糸を巻
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