ね[#「ね」に傍点]らまれるとはなんだ! 俺を危険人物だと思ってやがる!)
根室の反対意見にかなり賛成の声が出て、何れも京都に家をもった生徒ばかりだった。結局仮装は「酋長の娘」という無意味な裸ダンスに決った。豹一は立って、不参加を表明した。赤井も、「裸ダンスの方が不穏当ではないか」と反対意見を述べて不参加と決ったのである。
窓の外を見ていると、教室へぬっと黒い顔を出した男があった。野崎だった。
「君、仮装に出ないの?」と豹一が言うと、野崎は眼鏡の奥で眼をパチパチさせて、
「俺は出えへんのや。練習せえへんかってん」と未だ大阪訛の抜け切らぬ口調で言って、黒い顔をちょっと赧くした。ああ、そうかと豹一は思い当った。野崎はひどく忘れっぽい男で、教室でもたびたび教科書を忘れ、隣の豹一の机へ自分の机を寄せて、「ちょっと見せてんか」とこれが三日に一度である。その都度、気の毒そうに、「君も大阪やろ? 大阪へ帰るんやったらわいの定期貸したるぜ」というのだった。彼は毎日大阪から通学していたのである。
「君はどうするんだ? 定期無しで……?」と訊くと、
「わいは京都で待ってるさかい、大阪へ着いたら直ぐ定期
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