体にボール紙の鎧をつけ、兜を被って、如何にも虎退治らしい装《いで》立だった。竹藪が装置してあった。
「なんだ、君が虎を退治るのか。見せないのか?」
 とあきれて訊くと、
「実はこれは僕の発案なんだ。実物の人間が立っているところが味噌なんだが、かわり番に立つことにして、いよいよ僕の番になって見ると、とてもこんな恰好で立てやしないんだ。が、発案した以上、立たぬ訳にはいかないじゃないか。それで立つことは立ったが、ドアを閉めて誰もはいれぬようにしてやったんだ。寒いよ。煙草あるか」
 豹一は吹き出してしまった。こんな痩せてひょろひょろした虎退治があろうかと、朝からの不機嫌が消し飛んでしまった。煙草を渡すと赤井は、
「封を切ってないね」
 豹一は幾らか恥しかった。ただなんとなく持っているだけで、吸う気になれなかったのである。照れかくしに、
「虎はどうした?」と言うと、
「デコが間に合わなかったんで、立っている人間がしばしばうおーッと唸る仕掛になっているんだ。妙なものを発案したもんだ」と苦が笑いをした。交替のものが来るまで動けないと言うので、豹一は、
「じゃ、また後で」
 とそこを出た。寄宿舎を出る
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