へ出て行った。その拍子にまるで地の揺れるような眩暈がして、ゲッと異様なものが胸を突きあげて来た。豹一は塀に両手を突いて、反吐を吐いた。眼の前が一瞬真っ白になり、倒れそうになった咄嗟に、
(誰も出て来ないな)と思った。「止せ! 止せ! 向うも三高生だよ」としきりに止めているらしい声が聴えた。ガラス障子のなかには濛々たる煙が立ちこめ、人々が蠢いているのを遠い舞台を見るように眺めた。すっかり吐いてしまって、暫く塀に凭れてしゃがんでいると、不思議なくらいしゃんとして来た。
 誰も出て来ないと分ると、豹一は自分の行動が妙に間の抜けたものに思われて来た。赤井に先を越されたという想いと、一つにはその生徒の英雄を気取った、威嚇的な態度に対する義憤から、飛び出してみたものの、一人相撲の感があった。
(うまい時に飛び出して反吐を吐くところを誰にも見つけられなかっただけが、もっけの倖いだった)そう諦めて、豹一は再び正宗ホールのガラス障子をあけた。先刻の生徒と視線が合った。豹一はわざとその傍をゆっくり通って、元の席へ戻った。
 赤井は向い側に坐っている二人連れの上品な顔をした男と前から知り合いのような顔で、盞
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