すると、お駒はげらげらと笑いながら、すっと奥へひっこんで、また顔を出す。豹一はそんなお駒の仕草までが癪にさわった。しかし、いずれ何かの必要もあろうかと、その女の顔はしかと記憶えて置くことにした。じろじろ見ていると、お駒は奥へ入ったかと思うと、お茶を持って直ぐに豹一のテーブルへ来た。赧い顔をしていた。豹一は鼻糞をほじっていた。
十分程してそこを出た。出しなに柱時計を見ると、秀英塾を出てから丁度三時間経っていた。外出時間も丁度切れたと思うと、豹一は重苦しい心がすっと飛んでしまい、足取りも軽かった。「吸え」と赤井が出してくれた「ロビン」という煙草を吸った。が、はじめて吸うので、むせていると、
「こんな軽い煙草にむせる奴があるか」と赤井に言われた。よし、いまに強い煙草が平気で吸えるようになってやるぞと自分に言い聴かせて、何という煙草が強いのかと眼をきょろつかせていると、赤井は、
「ロビンは十銭なんだ。チェリーも十銭だが、チェリーよりもうまいぞ」と通らしく言い、
「ロビンはコマドリか。おい、『コマドリ』へ行こうか。あそこも三高の奴らで一杯だな。正宗ホールも一杯だろう。さてどこへ行こうか」
三
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