なんとかいう女優のところへ行ったんだよ。そして、これを着変えて下さいって浴衣を出すとね、別室で着変えると思いきや、その女優はなんたることにや、奴さんの眼の前でぱっとだね……、とにかくあれだよ、浴衣ってものは素肌の上に着るもんだからね、しかし、まあ、おれなら眼をまわさないがね。奴さんともかくやられたらしい。あ、は、は、……凄い女優もいるもんだね」
「感心したか?」土門が口をはさんだ。
「おらあレヴュー小屋の住人だぜ。貴様はどうなんだ? 感心したろう」
「わてはろくろ首を見てもおどろかん。もっとも、見たこともないがね。――感心するとしたら、こちら様だろう」土門は豹一を指した。
 豹一はからかわれていることに腹を立てる余裕もなかった。北山の話が豹一の心に与えた効果は、そんな余裕があるには、余りにどぎつすぎたのである。
 その夜、豹一は二人に誘われて飛田遊廓で一夜を明かした。
 高等学校時代、赤井や野崎に誘われても頑として応じなかった豹一も、いまは自虐的な気持から、二人のあとに随いて行った。
 女は長崎県松浦郡の五島から来たと、言った。女が親元へ出す手紙の代筆をしてやりながら、いろいろ女の身の
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