に思い泛べた表現を借りていえば、そんな風に多鶴子の「食客」となって、二週間経った。
恋をしている証拠に、豹一はもはや多鶴子以外になんの興味も感じ得なかった。もともとたいして世上百般のことに興味をもたない彼ではあったが、しかし、少くとも彼の自尊心を刺戟することに対しては情熱的に興味をもっていた。ところが、その自尊心も彼には残り少なかった。そんな風に嫉妬に苦しみながらも多鶴子を愛している以上、自尊心にははじめから兜をぬいでいたのである。
ところが、一方多鶴子の方は、それがはじめての経験ではないという点だけでも、豹一よりいくらか余裕があった。おまけに、彼女は嫉妬する必要もない。従って彼女には豹一のこと以外になお興味をもち得る余裕があった。「人気」がそれだった。
彼女は豹一との恋以外になんら為すところのない生活に漸く焦り出して来た。もし彼女が毎晩「オリンピア」へ出掛けて、くだらぬ男たちに取りまかれていたのなら、豹一と一緒にいることにほっとした救いめいたものを感じ、そうした生活に飽くこともなかったわけだが、ただ豹一とばかしいる生活では、折角の豹一の魅力も薄らいで来るのだった。豹一の魅力をほ
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