た。なお彼女は、豹一の狂暴的な嫉妬に心を打たれてしまった。矢野は嫉妬の素振りも見せぬほど円熟していた。ときには憎いと思われるぐらい紳士であった。それに比べると、豹一の表情のひとつひとつはそのまま恋する男のそれであった。
(こんな情熱的な人を見たことがない)多鶴子はそう思った。
豹一がもし四十男であったなら、彼の嫉妬ぶりにはさすがの多鶴子もうんざりしたところであろうが、その点彼の若さがそれを救っていた。
(初心なんだわ)感激した彼女は豹一に、
「これまであんたほど好きになった人はないわ」と、言った。
自尊心の強い彼女としては、よくよくの言葉だった。他の男、たとえば矢野には言えなかった言葉だった。相手が豹一だから言えたのである。だから、豹一は喜んでもよかったのだ。ところが、豹一は「これまで……」といういい方が気にくわなかった。
(これまで[#「これまで」に傍点]何人の男に惚れたんだろう?)
ほんの言葉の端にも、(嫉妬)がひっ掛かって行くのだった。なお、そんな風に「好きになった」とはっきり言われるのも辛かった。いっそ嫌いだと言われた方がサバサバするのだった。愛されていると思うと、一層嫉
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