た。
いかにも内気らしくおどおどしたり、つんと済ましこんでいたり、随分ぎこちない豹一ばかり見て来た多鶴子は、そんな情熱的な豹一を見ると、思わず唇の端に微笑を泛べた。そして、恐らくは無意識だったろうが、もっと彼を苛めるようなことを、ふといってしまった。
「ダンサーをしていた時、いろんな人に口説かれて困ったわ、伊太利人もあったわ」
ちょっとした昔話と、きき流せることも出来る言い方だったが、豹一の顔は途端に曇った。
「好きになったんだろう? 誰か……」
「そりゃ、少しは……。しかし、たいしたことはなかったわ」
「どんな人?」
「やっぱり踊りの上手な人ね。リードのうまい人だったら、踊ってる間だけ、ちょっと迷わされるわ」
豹一の顔はにわかに歪んだ。数えきれぬほど沢山な男に抱かれて踊っていたのだと思うだけでもやりきれなかったのに、踊ることによって自他ともにひそかに愉む気があったのかと思えば、もう豹一の嫉妬は果てしがなかった。
そんな豹一を見て、多鶴子はもう自分の年齢を気にしなくとも良いと思った。じつは多鶴子は、隠してはいたが、豹一よりも六つも年上であることに女らしい負目を感じていたのであっ
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