とも、佐古は焼餅をやいて若い男を撲ったと思われなくて済む。
かつての電機工らしく、佐古は他人を撲る快感を想って、ぞくぞくした。が、ふと思えば、佐古は豹一に弱点を握られているわけだった。
(おれが出たら拙い。あとで新聞に書かれたらわやくちゃになる)そこで、佐古はかねがね「オリンピア」と縁のある道頓堀の勝に依頼することにした。
道頓堀の勝は頼まれたことを、簡単にやってのけた。わざわざ喧嘩を売るきっかけを求める必要もなかったのである。道頓堀の勝は「オリンピア」が閉店になって、豹一が多鶴子より一足先に出て来るところを待ちうけていたのだが、おいと声を掛けて寄って行ったかと思うと、もう豹一の方から突っ掛って来た。弥生座の裏路次で撲り倒された相手を豹一が忘れているわけもなかったのである。豹一は前後の見境もなく、突っ掛って行ったが、
「二度と再びこの店へ来やがると、承知せえへんぞ!」
という道頓堀の勝の鼻声をきいた途端に、意識を失った。
はっと気がつくと、車に乗っていた。傍に多鶴子がいた。いつも豹一が降りることにしていた日本橋筋一丁目はとっくに過ぎていた。
簡単に撲り倒された醜態を見られたか
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