を瞠らしめるに足るものがあった。就中、佐古の眼に余った。
 佐古は豹一と多鶴子の「特別の関係」に就いては、この間の晩身を以て知っていただけに、やきの廻ることおびただしかった。豹一に弱点を掴まれているという痛さのために、一層癪に障った。ことに腹が立ってならないのは、毎晩豹一が閉店《カンバン》になるまで粘って、多鶴子と同じ車で帰って行くということだった。そのため、彼の図々しい計画もさすがに手も足も出なかったのだ。
(おれの計画の邪魔をしやがる。生意気な若造や!)
 しかし、そのことは豹一の意志から出たのではなく、じつは多鶴子から同じ車で途中まで送ってくれと、頼まれたことをやっていたまでであった。しかし、それならそれで佐古は一層腹を立てたところだったかも知れない。
(あいつは惚れられとる。生意気な奴)……には変りなかった。
(二度と再び『オリンピア』へ来られんように、がーんとひとつ行ったらんといかん!)そう思ったが、しかし、さすがに大人気ないと躊躇した。が、ふと、(あいつはうちの商売の邪魔や!)
 そう思いつくと、やっと口実がついた。これならば、ひとにきかれたとしても、恥しくないわけだ。少く
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