はないか。活字に組まれて、いま頃は輪転機に載せられた時分だろうと思うと、豹一は、
「ど、どうしてですか?」と、なにか胸のあたりが重いような声を出した。が、次の瞬間にはもう豹一は充分意地わるい口調になって、
「書かれちゃ困るんですか?」土門の話を想い出していた。
(書かれると人気に障わると、いうんだろう。この女はなによりも人気が大切なんだ。監督との問題でも、人気を出すための打算なんだ)
その女のことを散々悪く書いてしまったあとでも、なおこんな風に頭のなかで鞭をふるっていたのは、ひとつには豹一は多鶴子に対して済まぬと思う自分の気弱さを、振い立たせるためでもあったろうが、じつは、丁度そこへアイスクリームが運ばれて来たからであった。
「困るっていうわけでも……」ありませんと、多鶴子がいい掛けるのを、豹一は畳み掛けて行って、
「人気にかかわるっておっしゃるんでしょう!」
多鶴子はふと眼を落した。
「人気ですって……?」語尾が落ちた。
「違いますか?」
「違います!」いきなり、多鶴子の眼の輝きが睫毛を押しあげた。「人気、人気って皆様がおっしゃいますが、……」多鶴子の声は朗読口調になった。
「…
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