い豹一は、先を越されてしまったと、ますます屈辱を感じてしまった。自然、多鶴子の問に答える豹一の言葉は普通のなまやさしい答えでは済まされない筋合いになっていた。
ところが、運良くそこへ佐古が洋酒の瓶をもって現れたので、豹一は苦しい気持を押してまで失敬なことは言わずに済んだ。
「どないだ? 東洋新報さん。ネタがとれましたか?」
佐古が「東洋新報さん」といってくれたので、豹一はもう多鶴子に答えなくも良いとほっとして、
「はあ、とれました」と、思わず言った。多鶴子はその言葉にあきれてしまった。その顔を見ると、豹一もさすがに、(嘘をつけ!)と、苦しかった。
「そんならもう酔ってもよろしいな。一つ、行きましょう! こら、誰にも罎にもさわらさん内緒の洋酒でっさかいな、じイわり味わうとくれやす」
ボーイの手を借りずにわざわざ持って来てやったのだという顔で、佐古は豹一のグラスに注ぎながら多鶴子に目くばせした。多鶴子は心得て立ち上り、
「どうぞよろしく」席をはずしてしまった。豹一はあわてて、
「はあっ!」と、わけのわからぬ掛声を挨拶がわりに唸りあげて、多鶴子の後姿を見送った。
「さあ、いただきまひょ
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