ほど新聞記者は先ず名刺が要ると土門がいったのはこれだったかと、豹一は正直に作って置いた莫迦に小型の名刺を出した。ボーイはちらとそれを見て、
「はあ、さいですか? いま係の方に来てもらいまっさかい、ちょっとお待ちなすって……。さあ、どうぞ、お掛け下さい」
 名刺の効果はてきめんだった。ボーイは急に言葉使いを改め、椅子をすすめた。そして、陰気くさい溜り部屋のドアを押して出て行った。ドアをひらいた拍子に、はなやかなキャバレエの内部がぱっと見えた。豹一は妙に緊張した。
 暫く待っていると、燕尾服の胸に薔薇の花をつけた男が下品な感じの顔をぬっと出した。
「私佐古です」そう言ったかと思うと、いきなり、「あんた、東洋新報の方でんな?」と呶鳴りつけるように言った。
「はあ」豹一は相手の顔をしげしげと観察しながら、答えた。
「あんたとこはけしからん」佐古はどう見ても駈出しの新聞記者としか見えぬ、子供っぽい豹一をなめて掛ったのか、のっけ[#「のっけ」に傍点]から喧嘩腰だった。「なんでうちの記事を書いてくれはれしまへんねん。よそさんは皆書いてくれはりまっせ。ほんまにけしからん。書かんのは君とこだけやぜ。どな
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