。
編輯長がそんな風な失望を感じたことは知らず、豹一は滑稽なことだが、仕事を与えられた喜びにすっかり興奮して淀屋橋の方へ歩いて行った。編輯長の前で随分へまなことを言ったことを想えば、どうあってもこの「大任」を果さねばならぬ。豹一はひどく落着きがなかった。淀屋橋まで来たが、足は止まらず、一気に肥後橋まで来てしまった。
交叉点で信号を待っている間に、豹一はふと村口多鶴子の記事をよむために新聞を買うことを思いついた。朝日ビルの前で一そろいの新聞を買った。そしてビルのフルーツパーラーへはいって片っ端から読んで行った。
世事にうとい豹一は村口多鶴子に関しては全く無知といって良かった。その名前も編輯長にいわれてはじめて知ったぐらいであった。「罪の女優」だとか「嘆きの女優」だとか新聞の見出しに使われている意味がちっともわからなかった。新聞もそれに就ては詳しく書かなかった。もはや散々報道されつくして、映画ファンでなくても誰でも知っている事実であったから、わざわざ村口多鶴子が「罪の女優」である所以を説明する必要もなかったのである。
買って来た新聞に全部眼を通したが、結局豹一は村口多鶴子の罪や嘆き
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