いるのだと思ったぐらいである。
 編輯次長と社会部長が編輯長室へ呼ばれ、そして出て来た顔を見て、はじめて人々は、おや変だぞと気がついた。両人とも真蒼な顔をしていたのである。
「なんぞおましたか?」口の軽い連中がそう訊いたが、しかし、二人とも答えなかった。まさか、いま編輯長から「良え年してなにぼやぼやしてるねん。そんなこっちゃったら、もう新聞記者をやめなはれ」と言われて来たのだとは、長と名がついた手前でも言えなかったのだ。両人は、いまいましそうに、「土門の奴め!」と、唇を噛んでいた。
 じつは、その日の大阪の新聞が一斉にデカデカと書き立てている記事を、よりによって、東洋新報だけが逃がしていたのである。映画女優の村口多鶴子がキャバレエ「オリンピア」のラウンドガールになったという、いまならさしずめ黙殺されるか、扱うにしても遠慮して小さく扱われそうな記事なのだが、当時はこんな記事が特種として、あらゆる新聞の三面に賑かに取扱われていたのだった。妙な言葉だが、キャバレエはなやかなりし頃であった。それに、村口多鶴子は監督との恋愛事件のいまわしい結果が刑法問題になったという、いわば新聞の見出し通り、「
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