「誤解とぬかしたな」と、言った。
「誤解だ。誤解も誤解も大誤解だ。おれが下手人だなんて、悲しいことをいってくれるな」北山はいかにも悲しそうな声をだした。が、それはまるで座附作者が役者に科白をつけているとしかきこえなかった。
「本当か?」
「遺憾ながら本当だ」
「なるほど、遺憾ながらでっか。そんなら、誰だ?」
「わからん。わかろうとは思わん。わかると一層辛い。わかっているのは、銀子が失われたという、痛ましい事実だけなんだ」
「…………」
 土門はわけのわからぬ唸り声を出したが、いきなり、
「握手しよう」と北山の手を握った。
「どうせ、下手人はもみあげの長いヴァレンチノだろう。わしはいっそお宅に下手人になってもらいたかった」
 土門はわざとしんみりした声をだした。
「わしもやっぱり旦那に下手人になってもらいたかったよ」北山が言った。
「ざまあみろ」と、土門。
「ざまあみろ」と、北山。
「いい気持だ。焼酎禿のくせに踊子にうつつを抜かしやがって……。あはは……。恥しくねえのか?」
「うむ、いったな」
「どうだ、恥しくねえのか」
「うーむ」
「さあ、さあ、返答、返答!」
「さあ、それは……」
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