すってよろしいです。結果は追って――」いい掛けて、大声で、「おい、そうだな?」と給仕に問うた。給仕はうなずいた。「――結果は追って通知することになっています。えー、それから煙草は御自由に」
 豹一は三本目の煙草を吸っていた。
 問題用紙が配られた
[#ここから3字下げ]
一、作文「新聞の使命に就て」
二、左の語を解説せよ
 Lumpen
 室内楽
 A la mode
 Platon
[#ここで字下げ終わり]
 そんな問題だった。横文字を読むために問題用紙を横に動かす音が、サラサラと鳴った。豹一の傍の席でしきりに鉛筆を削っていた男が、暫く問題を見つめていたが、いきなり立上って、
「こら帰った方が得や。一人しか採れへんのに出来もせん試験を受けても仕様があらへん」豹一にきこえるように言って、こそこそと出て行った。すると、これを見ならうように、つづいて三人出て行った。
 豹一は居残って答案を書くことに、ちょっと拘泥った。なんだか出て行った人に済まないとも思われた。が、いま出て行っては、あいつは答案が書けないのだと軽蔑されるおそれがあると思い、辛うじて席に止った。答案を書いていると、ふっと鎰《
前へ 次へ
全333ページ中184ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
織田 作之助 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング