ー、お茶でも飲みに行ったのやろかと思いまして心当りあちこち探しにやっているのでありますが、どこへ逐電しましたのか皆目見当がつかない状態でありますので、とりあえず私が代役することになりました」笑い声が起ったが、しかし直ぐ止んだ。「――えー、そういう訳で、大変お待たせしまして、恐縮です」
 その時給仕があわててはいって来て、壇上の男に何か耳打ちした。
「えー、いまその男から電話が掛って来たそうであります。実は食事に行っているそうでありましてそれがまたとても暇の掛る店と見えまして、当分帰れそうにないから、誰か代ってやってくれということであります。とにかく私が代役するぶんには変りありません」
 豹一はこのふざけた「演説」に腹を立てるべきかどうかちょっと考えた。しかしずり落ちそうな眼鏡のうしろで眼をしょぼつかせているその男の印象はそんなに悪くなかったから、豹一はわざわざ席を立つこともしなかった。
「いま給仕が問題用紙を配ります。余白に答案を書いて下さい。時間の制限はありません。しかし、夕方まで掛ったりされますと、私が大いに迷惑します。――答案が出来ましたら、ここへ持って来て下さい。そして帰って下
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