年が生活に困って紙屑屋を開業したと、新聞に写真入りの、いわば失業時代だった。たとえば、ある日、
「社会部見習記者一名募集」、「応募者ハ本日午前九時履歴書ヲ携帯シテ本社受付マデ。鉛筆持参ノコト東洋新報」
 そんな三行広告が新聞に出ている朝、豹一が定刻より一時間早く北浜三丁目の東洋新報の赤い煉瓦づくりのビルへ行ってみると、もうまるで何ごとか異変の起ったような人の群が一町も列を成して続いていた。一名採用するというのに、この失業者の群はなんということかと、豹一はそんな世相をひとごとならず深刻に考えるまえに、そうした列に加わることに気恥しく屈辱めくものを感じた。よっぽど帰ろうかと思ったが、しかし、ここを逃しては、当分就職口はあるまい。どさくさまぎれの気持で、しょんぼり列のうしろに並んだ。
 無意味に待たされて、その列は一時間ほどじっと動かなかった。寒さと不安に堪えかねて、ひとびとはしきりに足踏みしていた。九時過ぎにやっと動きだしたが、摺足で歩くほど、のろい進み方だった。前の方から伝って来た「情報」によると、先ず一人一人履歴書を調べられているらしく、それを通過したものだけが直ぐあとで筆記試験を受け
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