んた――」妻君は義眼でない方の眼をふっと細めて、「こないだ中までいてくれはった菅はんいうお人をね、わてと怪しいいうて追い出したり、そら焼餅やかはんのどっせ。わてはもういつ何時《なんどき》でも、暇貰おう思てまんのどす」
そんな妻君の愚痴を、手紙の文章に纒めあげるのはむずかしかった。
「もう永いこと返事を出せしまへんのどす。うちが字の商売をしていてからに、手紙一本書けへんいうわけに、いかへんどっしゃろ。どうぞ、書いとおくれやっしゃ。ほかの人に頼まれへんのどっさかい」
そう言われてしきりに頭をひねっている時、豹一はふと、園井があのように律義に働いている理由がわかったと、思った。すると、にわかに周囲の空気が重くるしく感じられて来た。豹一は直ぐにも逃げ出したくなった。しかし、豹一は実行しかねた。手紙の代筆が済むと、相変らず帯封を書き続けるのだった。そこをやめて、ほかに働く当もないのだ。豹一はそんな自身が、さすがに卑屈だと恥じられた。
翌日新聞が刷り上って来たので、その発送をしなければならなかった。八頁の新聞だから先ず二枚ずつ頁を間違えぬように重ねる。次にそれを小さく畳む。それへ帯封を巻きつ
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