て切抜記事を探していると、うつらうつらするのだった。そんな時は、いつか新聞の家庭欄などを見るともなく見ているのだが、ふと何やら園井の気配を感ずると、周章てて新聞をパラパラめくって、なんとなく鋏を取り上げたりした。ふと振り向くと、園井は物差の横ににじんだインクをせっせと吸取紙で拭っているなど、園井の勤務振りは一分の隙もなかった。
社長は二階で裸になってせっせっと記事を書いているし、妻君は奥の座敷で針仕事をしながら、居眠りをしたり、煙草を吸いながら虚ろな眼でじっと膝の上の猫を見たりしているし、結局誰も見ているわけでないのに、なぜ園井はこんなに真剣になって仕事をするのかと、豹一は驚いてしまった。
社長と園井が印刷所へ出張校正に行った留守中、豹一が帯封を書いていると、妻君が奥から出て来て、
「毛利はん。済んまへんけど、あんた、一つ手紙書いてくれはれしまへんどっしゃろか」と豹一に手紙の代筆を頼んだ。大津の料理屋で働いている彼女の友達から、近況問合せの手紙が来た、その返事を書いてくれと、彼女は言い、
「どんな風に書きましょう」豹一が訊くと、
「わてのこのお腹《なか》のなかにたまってる、いやや、
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